天目釉彩愁花器

天目釉彩愁花器(てんもくゆうさいしゅうかき)径12cm×高17cm

龍山晩年の小作品です。
平成20年4月に亡くなった龍山ですが、病に侵されながらも最後まで仕事場で作陶を続けていました。
これは平成19年製作です。花器の形を造ってから表面に天目釉を施して、その後一度、釉薬を全部掻き落として次に模様を描いています。
これまでの作風とは違い、子供が描いたような自由で明るい絵のようにも見えます。
しかしながら作品名を見ると「うれい」という意味の「愁」と名付けています。
窯からあがったこの花瓶を、今は亡き主人清高が寝室に持っていくと横たわったまま満足したように見つめ、しばらく傍らに置き手に持って眺めている姿がありました。
父の心の内を表していると思うとせつない気持ちになります。
小さな花瓶ですが龍山の魂のこもった銘品です。

青木 敦子